ウォーキングで痩せない人へ!エネルギー消費を増やす歩き方【専門家監修】
投稿日:2026/06/18
更新日:2026/06/18
「痩せたい!体力をつけたい!」
そんな思いでウォーキングを始めたのに、なかなか効果が出ない…。 そんな経験はありませんか?
問題は「歩き方」にあるかもしれません。
今回は、運動生理学およびバイオメカニクスが専門で、 愛知県内で「正しい歩き方講座」を開催している 中京大学・渡邊航平教授に取材。
運動強度を高めてエネルギー消費量を増やす歩き方と、それらによって得られる健康効果を教えていただきました。
つま先の使い方・歩く速さ・靴の選び方という3つのポイントをメインに、 今日から実践できる効果的な歩き方を解説します。
目次

運動強度とはなんですか?
渡邊さん:行っている運動が、体にどれくらい負担をかけるかを示す指標です。
たとえば、散歩とマラソンでは体への負担がまったく違いますよね。
その「きつさの度合い」を数値で表したのが運動強度です。
強度が上がれば上がるほど心拍数が上がり、筋肉が使われ、消費するエネルギーも増えます。
ただし、きつければいいというわけではありません。
自分の体の状態や目的に合った強度で、継続することが大切です。
特にウォーキングの運動強度を上げるとどんな効果がありますか?
渡邊さん:最もわかりやすいものだと、エネルギー消費量が増えることです。
エネルギー消費量が増えると痩せますか?
渡邊さん:有酸素運動によるエネルギー消費量は運動強度とともに運動時間も強くかかわってくるので、継続的にやっていけば痩せると思います。

渡邊さん:人が歩く一般的な速度(時速約4~5キロ)を越えた後は、速ければ速いほどエネルギー消費量が増えます。ただし、時速6~7キロを越えるとエネルギー「効率」は低下します。
エネルギー効率が下がるというのは、つまり同じ距離を進むのに、より多くのエネルギーを使うようになるということ。
これは一見、エネルギーが無駄に使われるというように思われるかもしれませんが、ダイエット目的で歩いているなら、喜ばしいことです。
時速約8~9キロの歩行だと、場合によっては走るよりエネルギー消費量が多くなることもわかっています(参考論文1)。

なぜ歩く方が走るよりエネルギーを消費するのでしょうか?
渡邊さん:走る動作は非常にエネルギー効率が高い運動なんですね。
走るときは着地の瞬間に筋肉や腱がバネのように縮んで、次の一歩を踏み出すときにその反発力を使えます。
歩くときはその反発をうまく使えないので、多くを自分の筋力でまかなわないといけない。
だから歩行運動では高速になるほどエネルギー効率が低下し、消費エネルギーがどんどん増えていくんです。

自分に体に合う運動強度の具合を知りたいです。
渡邊さん:一つの基準として挙げられるのが「隣の人と話しにくくなる程度」です。
ある程度強度が上がってくると、息が上がって、話ができなくなりますよね。
運動強度が高まっているかの確認として、いつもの調子では話せないぐらい少し息が弾む程度を目指してみてください。
いつもの調子でお話ができるのは、強度的には少し弱いと思います。

では実際に、どのように歩くと運動強度を高められるのでしょうか。
強度を高めるにはどのように歩くのがいいですか?
渡邊さん:ふくらはぎをしっかり使って、つま先で地面を蹴って、歩くのがいいです。
歩くのにふくらはぎの筋力はどう使われているのですか?
渡邊さん:大前提として「歩く」というのは、地面を後方に蹴っていく動作です。
地面を蹴るためにふくらはぎの筋力を使います。

ただ、歳をとるにつれてその筋力が低下して蹴りだせなくなるので、つまづかないように脚を持ち上げて歩こうとしてしまいます。
蹴れていないから脚を上げようとするのであって、脚を上げることで蹴れるようになるわけではないことに注意すべきです。

脚を上げる動作を極端に意識すると、 どんどん腰が引けておかしい動きになってしまう。
極論、その場で脚を上げているだけになってしまいます。
本来脚は蹴った反動で勝手に上がってくるものです。
地面を蹴って歩くためのコツを教えてください。
渡邊さん:身体の真下ではなく、後ろの方で地面を蹴る意識で、靴のつま先部分までしっかり使って、次の一歩に進んでください。
身体の下や少し後ろあたりで足が地面から離れてしまう歩き方は、地面を後ろに押せておらず、ふくらはぎの筋肉を使えていません。

足が地面についている時間を、我慢して少し長くするようなイメージです。
着地する足はどうすればいいですか?
渡邊さん:体を支えようと勝手に足が出るので、そこは変に意識しなくていいです。
蹴りだす足に意識を向けると、自ずと適切な位置に着地します。
つま先まで地面につけてウォーキングをすると、足の疲労具合がいつもの倍に…。
足が重たくなり、筋肉をしっかり使わないと次の一歩が出ませんでした。
さらに早歩きすると体のバランスが取りづらくなり、全身が疲れます。体が熱くなり、痩せる気がしました。
普段の歩き方に戻すと足が急に軽くなりました。足を「上げて」歩いていたこと、「蹴りだす」という意識がまったくなかったことに気が付きました。
歩く速度はどれくらいがいいですか。
渡邊さん:「歩く」と「走る」の間のスピードで歩くことがいいですね。
普段歩いている速度は、きっと最も歩きやすい速度なので、効率はいいはずです。
あえてそこから逸脱するような感じの早歩きをして、「逆に走った方が楽なんじゃないか?」っていうような速度で歩くのがいいです。

渡邊さん:私が開いているシニア向けの教室では、基本的にはジョギングはむしろ推奨していません。走る動作は関節への負担も大きくなってしまうため、歩く動作の中でいかに運動強度を上げていくかを心掛けています。
「時速8キロで歩いてみましょう!走っちゃダメですよ」と伝えています。
これくらいの速さで歩くのは、みなさん「結構きつい」と言われますよ。

地面を蹴って歩くのに適した靴とはどういったものですか?
渡邊さん:つま先までソールがある靴がいいですね。
ランニングシューズやウォーキングシューズの多くは、つま先までソールがついています。
歩く際は、ソールの端ギリギリまでしっかり使い切ってほしいです。
どんな靴はNGですか?
渡邊さん:革靴やファッション性のある靴、ヒールのある靴などはつま先までソールがついていないことが多いので、地面をしっかり蹴るといった点では向きません。
まずは手持ちの靴でソールを確認してみましょう。
もしつま先までソールがなければ、ウォーキング専用の靴への切り替えも選択肢の一つです。
amepla(アメプラ)には、つま先までソールが付いた靴があります。
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詳しくはこちら。
自分に合った靴を探して、試してみてください。
今春より、ameplaは渡邊さんとウォーキングシューズに関する共同研究を行っています。
ameplaの既存靴を改良し、筋肉の活動を調べる筋電図をとったり、つま先の動きや向きをセンサーやカメラで計測したりしています。
呼吸はどうすればいいですか?
渡邊さん:そこまで意識しなくていいです。自然に任せてください。
腕の振り方は?
渡邊さん:腕を大きく振ると下半身の動作とのバランスを調整してくれるため、エネルギー効率が良くなります。
強度を高めたいなら腕の振りをあえて抑え、ふくらはぎの蹴りだす力を意識して歩きましょう。
姿勢は?
渡邊さん:「姿勢を正して」などとよく聞きますが、強度を高める上ではあまり関係ないので、自然な姿勢でいいです。

歩き方を変えることで、消費エネルギーが増えることはわかりました。
体にはほかにどんな変化が起きるのでしょうか。
強度を上げると、体にどんな変化が起きるのでしょうか?
渡邊さん:血管を流れる血液の量が増えます。
体を動かすと、普段より心臓がドキドキしますよね。
あれは、筋肉が必要とする酸素とエネルギーを血液が一生懸命運んでいる証拠です。
ドキドキが強くなればなるほど、血液量も増えていきます。
血液量が増えるとどんな影響がありますか?
渡邊さん: 血管の内側にある「血管内皮細胞」が刺激されます。

渡邊さん:すると血管を柔らかくする物質が分泌され、動脈硬化の予防につながると言われています。
さらに血管が柔軟になると血圧が下がりやすくなるので、歩行運動において強度を上げることは高血圧の予防にも効果的とされています。

日常生活での身体活動量が多いほど高血圧の発症リスクは下がりますが、「普通の歩行」と「早歩き」を比べると、早歩きの方がより発症リスクを下げられることが広く知られています(参考論文2)。
つまり、ただ歩くだけより、少し頑張った歩き方の方が、血管への効果は大きいのです。

渡邊さん:研究段階なのですが、運動をすると脳の神経細胞を育てたり守ったりする脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain-Derived Neurotrophic Factor) が分泌され、脳神経の新生が期待できるのではないかと言われています。
うつ病といったメンタルヘルスを崩してしまった人に対して運動が推奨されていますが、ある程度強度を高めた方が、より効果が期待できるのではないかということです。
いつも無意識に行っていたウォーキングの歩き方、なんとなく選んでいた靴。
ほんの少し意識を変えるだけで、「ただ歩く」から「エネルギー消費を増やして歩く」へ変わります。
運動のために新たに時間を確保しなくても、消費エネルギーを増やす意識を持つだけで、毎日のウォーキングや移動時間が体を変える時間になる。
つま先でしっかり蹴りだす意識で、まずは今日の帰り道から歩き方を変えてみませんか。
参考)
論文1:The Physiological Society『Cavagna & Kaneko: Mechanical work and efficiency un level walking and running. J Physiol 268: 467-481, 1977』
論文2:Society of Health and Physical Educators『Paffenbarger & Lee: Physical activity and fitness for health and longevity. Res Q Exerc Sport 67(3 Suppl):S11-28, 1996.』

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