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発酵食品の菌は死んでも腸活に意味がある?専門家に訊く「届ける菌」と「育てる菌」

発酵食品の菌は死んでも腸活に意味ある?専門家に訊く「届ける菌」と「育てる菌」

筆者(ナナコ)は普段から、無理のない範囲で腸活を意識した食事をしています。
熱を加えたら菌が死んでしまうのでは?と思い、味噌汁はあまり沸騰させない。
「菌は生きて腸まで届いているの?」と疑いながらも、毎朝ヨーグルトを食べています。

発酵ライフ推進協会名古屋校の校長である古澤久美さんにそう話すと、返ってきたのは意外な言葉でした。

「菌は死んでいても、腸内細菌(腸に住んでいる菌)の餌になるんです!」

なんとなく理解していたつもりの、発酵と腸活の話。
今回はその仕組みと、無理なく続けられる腸活方法を教えていただきました。

古澤久美さん
監修
古澤久美さんさん
発酵ライフ推進協会 名古屋校 校長/食のアトリエ「ゆいの森」主宰
パン講師として活動するなか、家族の病気をきっかけにマクロビオティックを学び、味噌作りで発酵の面白さに気づく。以来15年以上、発酵食の魅力などについて伝えている。名古屋で発酵料理教室や自然発酵酵母パン教室などを行う『食のアトリエ「ゆいの森」』主宰。愛知「発酵食文化」振興協議会にも参加。

腸活とは?免疫&栄養&心まで支える腸の働き

腸活とは?免疫&栄養&心まで支える腸の働き

コロナ禍以降「腸活」「免疫力」といった言葉をよく聞くようになりました。
どうして腸に注目が集まっているのでしょうか?

古澤さん:腸は私たちの体にとって、とても大切な働きをしてくれています。

コロナ禍を経て、「自分の体は自分で守る」という考えが、以前より強くなったように感じます。
そのために何をすればよいのか。行き着いた先が、意外にも腸だったんです。

腸がどれほど大切な働きをしてくれているのか、順番に説明しますね。

免疫細胞の約7割が腸に集まっている

免疫細胞の約7割が腸に集まっている

古澤さん:免疫細胞が一番多くいる臓器は腸。体の中で、食べたものが直接届くのは消化管だけです。

外から来たものがダイレクトに届き、細菌やウイルスといった危険にさらされる可能性がある腸は、しっかり守らなきゃいけない。なので、腸には免疫細胞の約7割が集まっているんです。

2.腸は栄養を全身に届ける「体のハブ空港」

2.腸は栄養を全身に届ける「体のハブ空港」

古澤さん:一般的には、腸は消化・吸収・排出をするだけの器官だと思われていました。
ところが実際は、分解した栄養をそれぞれの臓器に届けているのです。

腸で細かく分解された栄養は、血管などを通って肝臓をはじめ各臓器へ運ばれていく。
まさに「体のハブ空港」的な役割をしています。

3.脳腸相関とは?腸が筋肉や心にも関わる仕組み

3.脳腸相関とは?腸が筋肉や心にも関わる仕組み

古澤さん:どれだけタンパク質をとっても、腸が整っていないと栄養は吸収されません。
筋肉をやみくもに鍛えるより、腸内を整えたほうが筋肉は育つ、とおっしゃる先生もいます。

心とも関係が深く、脳と腸が互いに影響し合う「脳腸相関」という現象も注目されていますよ。

3.脳腸相関とは?腸が筋肉や心にも関わる仕組み

古澤さん:ストレスで腹痛や便秘になった経験はありませんか?
それは脳の緊張が腸に伝わって起きる、「脳腸相関」のわかりやすい例です。

「腸活=便秘解消」という単純な話ではありませんでした。
免疫、栄養、筋肉、代謝、そして心。腸が関わる範囲はとても広い。
腸活とは、腸内環境を良好に保ち、健康に暮らすためのライフスタイルそのものだと感じました。

発酵食品はなぜ腸によい?鍵はもともといる「腸内細菌」

発酵食品はなぜ腸によい?鍵はもともといる「腸内細菌」

腸を整える方法はいろいろあるそうですが、今回は食事、なかでも「発酵食品」にスポットを当てて紹介します。

お腹を温めて腸の動きを助ける「温活×腸活」は、こちらの記事で紹介しています。


古澤さん:発酵食品とは、麹菌や乳酸菌などの微生物が働いて、人にとって有益なものに変化した食品のこと。
微生物の働きで、食品が分解され、栄養価が増したりおいしくなったりします。

■発酵のメリット
・腸内環境を整える
・免疫力を上げる
・栄養価が増す
・消化吸収がよくなる
・精神が安定しやすくなる
・保存性が増す
・おいしくなる

発酵食品の菌は生きて腸に届く?住み着かない理由

発酵食品の菌は生きて腸に届く?住み着かない理由

発酵食品が腸によいのはなぜですか?

古澤さん:ヨーグルトや味噌、キムチ、ぬか漬けなどの発酵食品には、乳酸菌や酵母といった菌が多く存在します。

それらの菌が便秘や下痢、肌荒れなどを引き起こす悪玉菌の働きを抑え、腸内環境を整えてくれるんです。

菌は腸まで生きて届くことが重要ですか?

古澤さん:そう思われがちなのですが、生きているかどうかだけにこだわらなくてよいんです。

私が発酵を学び始めたころ、微生物は生きて腸まで届かないと言われていました。
その後の研究で、案外生きたままたどり着くこともわかったのですが(とくに漬物などの植物性乳酸菌は届くと言われています)、その命は1、2日とされています。

食べた菌は基本的にそこに住み着かず、外へ出ていくんですか?

古澤さん:そうなんです。もともと腸には、自分の腸内細菌が集団で暮らしています。
外から来た菌は、いわば「転校生」のようなもの。ずっと居座る菌だったら、むしろ怖いですよね。

加熱で死んだ菌(死菌)も腸内細菌の餌になる

加熱で死んだ菌(死菌)も腸内細菌の餌になる

では、生きて届く菌だけが大事、というわけではないんですね?

古澤さん:そうなんです。むしろ注目してほしいのは、死んだ菌(菌体)も、腸にもともといる「腸内細菌」の餌になるということです。

餌を得た腸内細菌は元気になり、免疫細胞に働きかけるなど、体にとってよい役割を果たしてくれます。

つまり発酵食品は、生きた菌を届けるだけでなく、死んだ菌でも腸内細菌を応援できるんです。

ただ、発酵や腸内細菌の働きは「まだ5%ほどしかわかっていない」と言われるほど、研究途中の分野。
今お話ししたのも、あくまで現時点でわかっていることなんですよ。

腸活は「届ける菌」と「育てる菌」で考える

腸活は「届ける菌」と「育てる菌」で考える

古澤さん:菌は大きく2種類あると考えてみてください。外から摂る「届ける菌」と、もともと腸にいる腸内細菌である「育てる菌」です。

ー意識すべきは、「育てる菌」ですか?

古澤さん:そうですね。届ける菌が悪いわけではないので、食べておいしい、調子がよいと思うものは食べてほしい。

ただ、研究で効果が報告されているような菌は、毎日かなりの量を食べ続ける必要があると言われます。
それよりも、もともと腸にいる腸内細菌を元気にすることに目を向けてほしいですね。
育てる菌は、死んだ菌の体(菌体)や発酵性食物繊維を餌にして元気になります。
次の4ステップも、この2つの餌を意識したものです。

発酵食品で腸活するやり方は?初心者でも続く4ステップ

腸活は「届ける菌」と「育てる菌」で考える

腸活のために、ヨーグルトや納豆を意識的に食べているという方は多いかもしれません。

でも「発酵食品を食べなきゃ!」と意識しすぎると疲れるし、飽きるはず。

ではその次にできることは?初心者が無理なく続ける腸活方法を教えていただきました。

ステップ1.発酵調味料(塩麹と醤油麹と甘酒)を買う

ステップ1.発酵調味料(塩麹と醤油麹と甘酒)を買う

古澤さん:スーパーで発酵調味料を買って、料理に使ってみてください。味の変化も楽しめるはず。
発酵調味料とは、麹菌や乳酸菌などの微生物を使って作られる調味料のことです。

一般的な調味料と何が違うんですか?

古澤さん:発酵調味料のほうが菌体の量が多いです。
たとえば、塩を塩麹に置き換えると、塩味だけではなく菌体を食べることにもなり、腸内細菌が喜びます。

発酵調味料はどのように使うのがよいですか?

古澤さん:塩の代わりに塩麹、醤油の代わりに醤油麹、砂糖の代わりに甘酒です。

肉じゃがだと、醤油、砂糖、酒、みりん、だし…とたくさんの調味料を入れると思いますが、私は甘酒と醤油麹だけでポンポンと味付けしちゃいます。

ステップ1.発酵調味料(塩麹と醤油麹と甘酒)を買う

古澤さん:麹の酵素がタンパク質をアミノ酸に、でんぷんを糖に分解するので、うま味と甘みが増えるんです。
麹の菌体が料理に入るし、調味料の種類は減るし、味がよくなるしで一石三鳥。

加熱すると菌は死んでしまいますが、気にしなくて大丈夫。菌体は残るので、腸内細菌の餌になってくれます。

古澤さんが暮らす愛知県は「発酵大国」だそうですね。

古澤さん:味噌、醤油、酢と、調味料になる発酵食品の醸造がさかんな土地なんです。
全国の醸造関係者の間でも「醸造といえば愛知」と言われるくらい。地元の蔵のものを探してみるのも楽しいですよ。

古澤さんは「発酵は、もともと保存の歴史。昔の人は体によいと思って食べていたわけではない」と話します。特別なものを探さなくても、地元の蔵の味噌や醤油を選ぶことから、無理のない腸活が始まるかもしれません。

発酵調味料を使った発酵ご飯レシピはこちら。

私も実際に作ってみましたが、「え、調味料これだけ?」と驚きました。普段あまり使っていなかった塩麹や甘酒だけで味が決まる手軽さにはまり、今では冷蔵庫に常備しています。

ステップ2.発酵食品と発酵性食物繊維を組み合わせる

ステップ2.発酵食品と発酵性食物繊維を組み合わせる

発酵性食物繊維とは何ですか?

古澤さん:大腸にいる腸内細菌が分解(発酵)できる食物繊維で、腸内細菌の餌になります。
食物繊維には、便のかさを増やして掃除してくれる「不溶性」もあり、それも大切ですが、餌になるのは「発酵性」のほうですね。

発酵食品とどう組み合わせるのですか?

古澤さん:発酵食品と発酵性食物繊維、2つ一緒に食べる感覚で組み合わせてみてください。

ステップ2.発酵食品と発酵性食物繊維を組み合わせる

発酵性食物繊維はどんなものがありますか?

古澤さん:わかめなどの海藻、豆類、キノコ、玉ねぎ、ごぼう、バナナなどのフルーツ、もち麦やオートミールなどです。
たとえば、発酵食品の味噌汁に、発酵性食物繊維のごぼうや海藻類を入れる。
これだけでも十分腸活に効果的な食事です。

おすすめの組み合わせを紹介します。

発酵食品発酵性食物繊維
味噌汁ごぼう・玉ねぎ・海藻・芋類
ヨーグルト菊芋パウダー(菊芋は発酵性食物繊維として今注目されています)
オートミール
果物(りんご・キウイなど)
キムチねぎ・海藻
甘酒オートミール・りんご・キウイ・青いバナナ
納豆もち麦入りご飯

発酵食品と発酵性食物繊維を掛け合わせた発酵ご飯レシピはこちら。

ステップ3.肉や魚を麹に漬ける

ステップ3.肉や魚を麹に漬ける

古澤さん:肉や魚、野菜を麹に漬けてみましょう。

麹のプロテアーゼという酵素がタンパク質を分解して、アミノ酸に変えます。
結果として柔らかくなり、うま味が増える。麹も一緒に食べることになるので、摂取する菌体の量も増えます。

漬け方は?

古澤さん:食材の重さに対して1割の塩麹か醤油麹に漬けるのがおすすめ。
そのあとは焼いたり、煮たり、揚げたり、野菜ならそのまま漬物になります。

ステップ3.肉や魚を麹に漬ける

古澤さん:たとえば鮭は、水気を軽く拭いてポリ袋に入れ、塩麹と甘酒をもみ込んで冷蔵庫へ。
焼く場合は、漬けダレを軽く拭うと焦げにくいですよ。

ステップ4.混ぜるだけのドレッシングから手作りへ

ステップ4.混ぜるだけのドレッシングから手作りへ

手作りは少しハードルが高いです…。

古澤さん:塩麹や甘酒を一から作らなくても、買ってきた塩麹と甘酒、油、お酢を合わせるとドレッシングが完成します。
ボトルに入れて振って終わり。発酵食品は日持ちするので、冷蔵庫で2ヵ月ぐらい持つんです。
(あくまで目安です。見た目やにおいなどに異変があれば食べないでください)

「難しい」と感じてしまうと続かないので、できることから少しずつ、楽しみながら始めるのがおすすめです。

楽しくなってきたら、塩麹や醤油麹、味噌作りにも挑戦してみてください。
作り方はインターネットなどで調べられます。

ステップ4.混ぜるだけのドレッシングから手作りへ

ここで、古澤さんが作った塩麹、醤油麹、甘酒を試食させていただきました。

いつも使っている調味料と比べて味が複雑!甘さがあるのに、後味はしっかり塩や醤油。あ、塩味も強いですね。豆腐やご飯の上にのせて食べるだけでもおいしそう。しっかりと味が感じられます。

そうなんです。しかも発酵の期間や使う麹の種類によって味がどんどん変わる。料理の幅が広がるし、腸活とか全然関係なく、楽しめると思いますよ。

「腸のために食べなきゃ」ではなくおいしいから食べる

「腸のために食べなきゃ」ではなくおいしいから食べる

発酵食品を意識した食事はどれくらい続けるのがよいですか?

古澤さん:死ぬまで(笑)。いつもそう答えています。おいしくて無理なく続けられることが一番です。

「発酵」と聞くと、面倒くさくて難しいイメージがありました。

古澤さん:全部やろうとしなくてよいんです。まずは一つ、これなら続けられそうというものを見つけてください。それが見つかったら、あとは勝手に続いていきますよ。

「腸のために食べなきゃ」ではなく、おいしいから食べたくなる。
それで結果的に腸が整っている。その順番のほうが楽しいし続くと思います。

腸活と発酵食品のよくある質問

Q.味噌汁は沸騰させないほうがよいですか?

A.腸活の観点では、沸騰させても特に問題ありません。

古澤さん:菌は死にますが、菌体は残って腸内細菌の餌になります。

Q.発酵と腐敗の違いは何ですか?

A.人間にとって有益かどうかです。

古澤さん:微生物が食品を分解する、という現象としては同じです。
おいしくなったり保存が効いたりすれば発酵、食べられなくなったりすれば腐敗と呼んでいるだけで、菌の側からすれば同じことをしています。

初めて食べる外国の方の中には、納豆は腐っているのではないかなと感じる方もいます。
発酵食品はその国の文化でもあります。

Q.発酵と腐敗の見分け方は?

A.目安は、見た目・におい・味・触った感じなど自分の五感です。

古澤さん:たとえば白いはずの塩麹に黒や赤、青のものが生えていたら怪しいので、無理に食べないようにしましょう。
市販のものでも、塩分濃度が低いものは、カビの生える可能性があります。

まとめ|発酵食品の腸活は今夜鮭を麹に漬けるところから

沸騰させないように気をつけていた味噌汁。疑いながら食べていた毎朝のヨーグルト。
どちらも間違いではありませんでしたが、少し気にしすぎていたんだとわかりました。

菌は生きていても死んでいても、腸の中で役割があります。だったら、そんなに構えなくてよい。
楽しみながら、簡単でおいしい発酵ご飯を取り入れていきたいです。

いつもはそのまま塩焼きにする鮭。
塩麹と甘酒に漬けて焼くだけで、立派な腸活。味がどう変わるのかも楽しみ。

まずは今夜、そこから始めませんか? 

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腸活の一環で、グルテンフリーの食事を取り入れる人も増えています。
麺もお菓子も揚げ物も大好きな筆者の、ゆる~いプチグルテンフリー生活はこちら。
好きなものを我慢したくない方は、ぜひご覧ください。

EDITOR’S PROFILE

ナナコ
ナナコ
日々を駆け抜けるように生きるせっかちライター。自分を落ち着かせようと始めたヨガにハマり、インストラクターの資格を取得。大阪出身で、お好み焼きと自然が好き。

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