集中できないのはデジタル漬けが原因?身近なところから脳を休ませる習慣を。

「やるべきことはたくさんあるのに、なかなか集中できない…」「気づいたらまたスマホを見てしまってる…」そんな悩みを抱えていませんか?
その原因は、もしかしたら頑張りすぎている脳にあるかもしれません。
ここでは、脳疲労回復のプログラムを監修している松尾伊津香さんに教えていただいた、集中力を高めるための「脳の休ませ方」をご紹介します。
集中力が切れてしまった時の対処法もご紹介しているので、切れた集中力を取り戻したいという方も、ぜひ最後まで読んで試してみてください。
目次
「集中しづらい」現代社会
仕事中に別のことが気になったり、一つの作業に集中できなかったり。
現代人の多くが抱えるこの集中しづらさ、実は「現代に入り加速している」と松尾さんは言います。

疲労回復ジム ZERO GYM プログラムディレクター
松尾伊津香さん
https://matsuoitsuka.com/
大学時代からヨガインストラクターとしてキャリアを積む。2017年にはストレッチとマインドフルネスを掛け合わせた疲労回復プログラムを開発し、日本初の疲労回復専用ジムZEROGYMを立ち上げる。
マルチタスクの弊害
ー 私は職場でSNS運用やコンテンツの企画を担当しているのですが、「今日は編集に集中するぞ!」と思っても、「DMの返信は来たかな」「こんな企画があったら面白いのでは」などと、気がついたら別の作業を始めていることも多々あり… 集中力が低いせいで、中々仕事の効率が上がらないと感じています。
松尾さん:それはマルチタスクの疲れが原因かもしれません。体の疲れに加えて「心」の疲れも一般的になりましたが、近年は「脳」の疲れについて注目されるようになりました。その原因の一つにマルチタスクが挙げられます。

松尾さん:現代社会では、多くの人がマルチタスクを日常的にこなしています。メール一つを取っても、10件あったら10件とも違う案件を対応しているように、一つのことだけをやる、というのはほぼ不可能です。
その中で問題になっているのが、一つのことに集中する力がマルチタスクによって失われてしまっているということだと松尾さんは言います。
もともと私たちの心や意識は「モンキーマインド」と言われるように、常に心が猿のようにあっちこっちに飛び交う性質を持っています。それがマルチタスクなどによって処理しなければならない情報が増え、さらにあっちこっちに飛び交いやすくなっており、集中しづらさを生んでると考えられます。

デジタル発達による情報過多が脳を疲れさせる
過去20年で、私たちが受け取る情報量は実に1万倍にも増えたというデータがあるそうです。 これは単なるニュースや文字情報だけでなく、技術の進化によってもたらされたものです。
例えば、画像一つとっても画素が細かくなったり、音源がクリアになったり、ゲームが立体的になったりと微細な情報が飛躍的に増加しています。

これらの情報が私たちも意識しないうちに脳に入り込んでいる一方で、脳の構造自体は昔から変わっていません。
この爆発的な情報量の増加が、私たちの脳を疲弊させている大きな要因の一つと考えられています。
しかし、逆に考えれば、脳に取り込む情報量を減らすことで、脳疲労を回復し、集中力も改善できる、というわけです。
脳を休ませる、とはどういうことか
脳を休ませるには、脳が受け取る情報を減らすことが重要と分かりました。
では、ただ何もしなければ、脳が休まるのでしょうか?

答えは「NO」です。
「行為」に没頭する
松尾さん:脳を休ませるには、“没頭”することがとても効果的です。
ーなるほど、“没頭”ですか…。それでいうと、家族が毎晩テレビゲームに没頭しています。彼女曰く、退勤後にも仕事のことばかり考えてしまうのがイヤで、強制的に仕事スイッチを切るためというのですが…。

松尾さん:気持ちのリフレッシュにはつながっていますが、「脳」のリフレッシュはできていない可能性が高いです。
ゲームというバーチャル空間に”没頭”することは、仕事からの距離を置けるものの、脳がさまざまな情報を受け取っていること自体は変わっていません。結果として「気持ちはリフレッシュしていても脳は疲れる」という状態に陥ってしまいます。
松尾さん:脳を休ませるには、「行為」に没頭します。ここでいう「行為」は、料理や掃除、歩くことなど、いたってシンプルなものを指します。

例えば、料理をしている時は、手順は考えていても、仕事のように過去や未来を行き来するような考え事はしていません。
これは、普段の「情報を探そう」「良いことを考えよう」といった “やるぞモード” とは異なり、脳を休ませることに繋がるそうです。
物理的に情報との距離を置く
近年、ひとりキャンプや森林浴というワードがトレンドに上がっています。
その背景にも脳疲労が関係している、と松尾さんは話します。

松尾さん:ひとりキャンプや森林浴に出かけることで、物理的に情報やデジタルデバイスから離れ、リアルな「今」を環境で感じられます。情報の疲れを感じるからこそ、余計に価値を生んでいるのだと思います。
このように、デジタルデバイスを一時的に手放し、情報との距離を物理的に設けることも、脳を休ませる一つの手段です。
【集中できないあなたへ】脳疲労を回復させる習慣3つ
ここからは、「脳疲労」を回復させて、集中力を高められる具体的な方法をご紹介します。
「習慣を手放したり変えることは難しい」と感じる方でも、取り入れやすい簡単な方法を3つ教えていただきました。
自分のライフスタイルに合ったものから、ぜひ試してみてください。
五感に集中する
日々の生活の中で五感を活用することは、脳疲労の回復に効果的です。
普段無意識的に使っている五感に、耳を傾けてみましょう。
おすすめは、お風呂の時間にお湯の温かさを感じてみたり、お肌を撫でてみることです。
お風呂なら毎日入りますし、リラックスタイムなので自然と五感に集中しやすいと思います。
1分だけでも肌の感覚に意識を向けることで、いつもの複雑な考えから離れ、脳が休まる感覚が味わえます。

また、食べる際に「味に集中する」「噛んでいる感じに集中する」といった「食べる瞑想」も、脳のリフレッシュにおすすめです。

「食べる瞑想」については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
関連記事:もう、我慢しない。食べながら食欲を抑える“食事瞑想”のやり方
デジタルデトックス
現代社会でデジタルデバイスを完全に排除することは難しいですが、上手に付き合うことで脳疲労を軽減できます。
質の良い睡眠も脳を休ませるために欠かせません。
寝る30分〜1時間前だけでも、スマホとの距離を置けると理想です。
どうしても寝る前のスマホ時間がやめられない! という方は、スマホを見ながら簡単なストレッチをするのでもいいと思います。

体を動かすことで血流がよくなり、頭がスッキリして寝つきも改善します。
仕事とプライベートの空間を分ける
仕事とプライベートのオンオフを明確にすることも、脳疲労回復に不可欠です。
コロナ禍でのテレワークにより、家が仕事場になってしまい、時間的には分かれていても、気持ちや頭が切り替えられない人が増えました。
場所を変えることは、頭や気持ちの切り替えに非常に重要な要素です。

テレワークであっても部屋を分ける、あるいはカフェなど別の場所で仕事をするといった工夫がおすすめです。
仕事が終わった後、電車に乗って帰る行為自体が「プライベートに切り替わるサイン」になるように、意識的に切り替えの行動を取り入れることが重要です。
【実践編】仕事で集中力が切れた時の対処法
仕事中に集中力が切れてしまった…
そんな時、気分をリフレッシュして集中力を取り戻す、超簡単な対処法を3つご紹介します。
目を閉じる
松尾さん:集中して疲れたと感じた時は、一度目を閉じましょう。
これは、常に外側に向いている意識を一時的に自分自身に戻す効果があります。
目を閉じて一呼吸、三呼吸するだけでも、気持ちを落ち着かせ、ほっとする感覚を得られます。

「儀式」を取り入れてみる
松尾さん:自分の中で「今からリフレッシュするぞ」という気持ちの切り替えになるような、ちょっとした「儀式」をつくってみましょう。
ー私は手を洗って気分をリフレッシュしています。
松尾さん:すごくいい方法だと思います。手を洗うという行為はとてもハードルが低いですし、水の冷たさや温かさを感じることで五感を刺激できます。

松尾さん:ラグビーの五郎丸選手のように、「これをしたら切り替わる」という簡単なルールを自分の中で設けることで、意識的にオンオフを切り替えやすくなります。
先にあげた「目を閉じる」を儀式として実践するのもいいですね。
簡単なストレッチ
松尾さん:特に座りっぱなしの仕事をしている場合、股関節などの下半身が動きません。
集中力が切れたと感じたら、お手洗いに行くついでに少し屈伸運動をしたり、股関節を曲げ伸ばししたりするのがおすすめです。
血流が良くなることで頭がすっきりし、酸素もしっかり運ばれます。
デスクでもできる簡単なストレッチ(例:首を回す、腕を伸ばすなど)を、スマホを見ながらでも良いので取り入れると、身体感覚が刺激され、リラックス効果が高まります。

座りながら股関節をほぐすなら
股関節の周りには、大腿静脈やそけいリンパ節などが集まっており、ここをほぐすことで特に効率的に血流を促すことができます。
立ち上がってストレッチがしづらいオフィス環境であったり、人目が気になってしまう…という方は、関節ツイストボードを使って、デスク下でこっそりケアしてみてはいかがでしょうか?

足を組む予防にもなるので、骨盤のゆがみにもアプローチできて、一石二鳥のアイテムです。

脳を労わって本来のパフォーマンスを取り戻す
集中しづらい環境や業務スタイルを自分の力で変えることは中々できませんが、自分の脳を労わる習慣を積み重ねることで、集中しやすい自分に変えることはできます。
今回ご紹介した方法は、どれも日々の生活に手軽に取り入れられるものばかりです。
ぜひ、今日からあなたのライフスタイルに合った方法を試して、集中力が高まり心身ともにスッキリとする感覚を実感してみてください。
投稿者プロフィール

- なにか考えていないと落ち着かない、けど考え過ぎたくない、典型的なINFP。重度のドーパミン中毒で、SNSを見ながら寝落ちするのが日常。マイブームは韓ドラを観ながらランニングすること。