骨盤底筋だけ鍛えても効果減!?“パワーハウス”を鍛える尿漏れケアの新常識
更新日:2025/12/17
「えっ、いま…?」
くしゃみをした瞬間、急に立ち上がった瞬間、笑っただけなのに――。
多くの女性が経験するちょっとした尿漏れ。
年齢を重ねるごとに増える原因は、筋力低下だけでなく、姿勢の乱れなどの日常生活と深く関係しています。
今回は、パーソナルトレーナーの古田祐実さんに、尿漏れに繋がる生活習慣やふとした時間にこそっとできるケア方法を教えてもらいました。
目次
3人に1人。
実はこの数字、「尿のお悩みがある」と回答した女性の数なんです。
※1000人の20代以上の女性にアンケート(2023年自社調べ)
多くの女性の健康のお悩みを聞いてきた古田さんによると、シニア世代だけでなく、30代や20代でも尿漏れの悩みは増加傾向にあると言います。

古田さん:一番多いのは、くしゃみをした瞬間ですね。
あとは、椅子から立ち上がった瞬間。
急にグッとお腹に力が入ったときに、「あ…」って出ちゃう方がとても多いです。
若いお母さんからは、「子どもとトランポリンで遊んだときに尿漏れしちゃって…」という相談もあります。
年齢が上がるにつれて、ちょっとした刺激でも漏れてしまうケースが増えますね。

尿漏れと深い関係を持つ筋肉が骨盤底筋です。
骨盤底筋は、骨盤の底を覆うように存在する複数の筋肉の総称で、膀胱・子宮・直腸といった臓器を下から支える役割を持っています。
ハンモックのように骨盤内の臓器を支えているため、この筋肉が弱まると尿道をしっかり締められず、尿漏れが起こりやすくなります。

古田さん:女性は40代後半〜50代にかけて更年期を迎え、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少します。
エストロゲンには骨盤底筋や膀胱・尿道を支える組織を強く保つ働きがありますが、その分泌が減ることで筋肉が弱り、尿漏れが起こりやすくなります。
また、妊娠中は常に骨盤底筋に腹圧がかかっています。
腹圧で伸びきってしまった筋肉をすぐに戻すことは難しく、産後の尿漏れに繋がっていきます。
尿漏れは年齢や妊娠・出産のせいだけで起こるものではありません。
古田さんは、「骨盤底筋は、緩みすぎていても疲れすぎていても良くない」と話します。

尿漏れに関係する、日常の些細な行動について教えてもらいました。
古田さん:骨盤底筋を疲れさせるNG行動です。
腹圧が強くかかっている状態だと、骨盤底筋が常に緊張しています。
ずっと緊張していると、逆に機能が悪くなり、咳をしたときなど必要な瞬間に骨盤底筋が間に合わなくなってしまいます。
便秘でいきむというのはかなりのストレスがかかっている状態なので、たまになら問題ありませんが、日常的になっている場合は気を付けたほうがいいと思います。

古田さん:骨盤底筋が緩んでしまうNG行動です。
運動習慣がないと血流が悪くなり、筋肉が動いていないので、そのまま放置すると動かない状態になります。
若い時であれば運動をしていなくても、筋肉が頑張って働いてくれますが、やはり加齢と共に筋肉はどうしても落ちてきます。
骨盤底筋も使わなければ弱ってしまい、結果、尿漏れリスクが高まります。

古田さん:これも骨盤底筋が緩むNG行動です。
血流も滞り、緩んだまま固まってしまうので、良くない状態です。

古田さん:スタイルアップをするために着用するガードルも、長時間着け続けると圧がかかりすぎて骨盤底筋を疲れさせてしまいます。
ガードルの着用しすぎは、尿漏れ対策の観点から考えると少し悪影響があると思います。

漏れ防止のために、骨盤底筋を締めて鍛える。
そんなトレーニングの一般的なイメージに対して、古田さんは「ただ骨盤底筋を鍛えるだけでは根本的には改善しない」と言います。
古田さん:大切なのは、インナーマッスル全体が働くことです。

古田さん:横隔膜に多裂筋、腹横筋と骨盤底筋の4つのインナーマッスルを家に見立ててパワーハウスと呼んでいます。
横隔膜が屋根で、多裂筋が大黒柱、腹横筋は壁、そして骨盤底筋が床です。
尿漏れの原因の多くは、骨盤底筋が弱いのではなく、パワーハウス全体が崩れていることです。
骨盤底筋だけをいくら鍛えても、他のインナーマッスルが連動しなければ、骨盤底筋の機能がうまく発揮しません。

古田さん:たとえば、猫背や反り腰など姿勢が悪い人は、パワーハウスが崩れている状態です。
パワーハウスが歪むことでインナーマッスル全体が連動せず、結果、骨盤底筋もうまく働かず、尿漏れに繋がります。
まずは姿勢を整えて、パワーハウスが機能できる状態を作ることが大切です。

古田さん:息を止めてしまうと、まず腹圧が急激にかかります。
くしゃみのような状態になるので、良くありません。
さらに、パワーハウスの屋根である横隔膜が使えなくなってしまいます。
横隔膜が固まってしまうため、骨盤底筋も正しく動くことができません。

古田さん:骨盤底筋がうまく鍛えられていない状態です。
お尻や太ももといったアウターマッスルは、確かにトレーニングをしている感覚が得られやすい筋肉です。
しかし、先にアウターマッスルを強く締めてしまうと、インナーマッスルである骨盤底筋にまでスイッチが入らない状態になります。
力を入れる順番は、骨盤底筋(インナーマッスル)→アウターマッスルの順番を意識してください。

古田さん:トレーニングのし過ぎで筋肉が疲れてしまうことも良くありません。
締めることと同時に緩めるバランスも大切です。
力を抜くことが苦手な方も多いですが、ゴムのように伸び縮みする適度な弾力を目指して、時にリラックスをしながらトレーニングをしてください。

古田さん:瞬発力やパワーのある速筋に対して、骨盤底筋は70%が持久力のある遅筋で構成されています。
筋肉が細く長く持続して働いてくれるようにしたいので、力を入れて頑張ってトレーニングをする必要はありません。
代わりに、持続的にゆっくりトレーニングをしたり、キープする時間を長くしたりすることがポイントです。
漏れ防止トレーニングをする時は、スポイトでスッと水を吸い上げるような優しい力で十分です。
インナーマッスルをしっかり使うために深く呼吸をしながら、骨盤底筋と繋がりの深い横隔膜の動きを意識しましょう。
古田さん:腹式呼吸は、インナーマッスルを1番効率よく鍛える方法なんです。
パワーハウスの筋肉(横隔膜・多裂筋・腹横筋・骨盤底筋)を全て動かせていないと腹式呼吸はできません。
腹式呼吸のポイントも頑張りすぎないことです。
吸った時にお腹全体が風船のように膨らむイメージで空気が入ってくるとベストです。

古田さん:手をお腹に置いて呼吸に合わせて上下に動くかどうかをチェックしてください。
できない場合は、まずは息を吐ききる練習から始めましょう。
とにかく深く呼吸をするという意識が大切です。

漏れ防止トレーニングは、習慣化して継続することが重要です。
古田さんに日常生活でできる簡単なトレーニングを教えてもらいました。
優しい力で呼吸を忘れずに取り入れてみてください。

1.椅子に座って姿勢を正す
2.頭の位置が動かないように、骨盤を腹筋の力で上げる
3.1日1回、30秒程度行う
骨盤そのものの動きを取り戻す準備体操です。血流が悪く、動かしづらくなっている骨盤をまずは動かしましょう。座りっぱなしの人にもオススメです。

1.椅子に座って姿勢を正す
2.足を閉じて、骨盤の下からスポイトのように骨盤底筋を引き上げる
3.10秒キープしたら力をふっと抜いてリラックス
呼吸をしながら、姿勢を真っ直ぐ正して、膝が開かないようにすることがポイントです。電車の中や会議中、テレビを見ている間など、座っている時ならいつでもバレずにできるトレーニングです。
とは言え、地味で分かりにくいのも漏れ防止トレーニングの悩みどころ。
トレーニングしているときに「あ…」なんてこともあるかもしれません。
そんな人には、履くだけで骨盤底筋を意識でき、ちょい漏れも吸収してくれるショーツがオススメです。
鍛えて引き上げる
膣トレショーツ
骨盤底筋ケアトレショーツ
ショーツの骨盤底筋に力が入る位置に棒が入っているので、座った時に骨盤が立ちやすいです。姿勢が崩れにくいかなと思いました。

1.足を閉じて寝る
2.息を吐きながら骨盤を後ろに倒す
3.背骨を1つずつ床から上げるように持ち上げる
4.体が一直線になったらキープ
5.元の位置に戻る
6.5回ほど繰り返す(慣れてきたら10回)
骨盤を上げていくので、スポイトのイメージがしやすく、かつ誰でも簡単にできるトレーニングです。足を閉じることで内ももを使いやすくなります。腰は反らずに体が一直線になるよう意識してください。

1.つま先を90度程度に開いて立つ
2.姿勢を真っ直ぐにして軽くつま先を同じ方向に膝を曲げる
3.足を内側に引き寄せるときに骨盤底筋も一緒に引き上げながら、元の位置に戻る(10回程度)
膝を深く曲げる必要はありません。ゆっくりと動いてください。歯磨きをしている時や赤ちゃんを抱っこしているときにも簡単にできます。
「どこの筋肉を鍛えているのか分からない…」
そんな時は、骨盤底筋に電気の力で刺激を与えてくれるスパッツもありますよ。
部屋着の中にサラッと着用できるので、移動や家事もOK!
どんな時でもながらトレーニングが可能です。
電気の力で
骨盤底筋をながらトレ
骨盤底筋EMSスパッツ
履いていても自由に動けるという点がメリットだと思います。履いたままヒップリフトやバレリーナスクワットをやれば、より効果的です。
古田さんは「まずは3ヶ月、できることから無理なく続けてみてください」と話します。
漏れ防止トレーニングは優しい力で大丈夫だとまずは理解すること。
古田さんがトレーニングをしてきた人も、劇的に尿漏れが無くなったというよりも、「そういえば気にならなくなった」という声が1番多いと言います。
骨盤底筋だけを我武者羅に鍛えるのではなく、姿勢や呼吸、日常のちょっとしたクセを見直しながら、じっくりと漏れにくい体へ整えてみませんか。

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