更年期のイライラにはアロマ!産婦人科医に聞く使い方とその理由
更新日:2025/10/02
理由もないイライラや体のほてり、そんな更年期障害にはアロマセラピーを試してみてはいかがでしょうか。
今回は、アロマセラピーを積極的に取り入れている産婦人科のアロマセラピストと院長にインタビュー。
実際に多くのアロマを試させていただき、香りを深く吸い込むと強制的に落ち着かされる感覚を実感。取材の最後の方は、ぼーっとしてしまうほどでした。
なぜ、香りを嗅ぐだけで心はこれほど落ち着くのか?
アロマの効能や楽しみ方、医学的な観点からなぜ効くのか等を取材しました。
目次
まずは、同院で多くの女性に寄り添ってきたアロマセラピストの馬場さんに基本の「き」を伺いました。
馬場さん:アロマセラピーは、植物から抽出した香り成分である「精油(エッセンシャルオイル)」を用いて、心と体のバランスを整える自然療法です。
精油の香りを嗅いで脳に直接働きかける方法と、植物油で希釈して肌に塗布し、マッサージを行う方法が代表的。
香りを嗅いだり肌に優しく触れたりと、植物の力を五感を通して心身にアプローチできるのが、アロマセラピーの大きな魅力です。
馬場さん:今回ご紹介するアロマセラピーに使用するオイルは、この2種類になります。
「精油(エッセンシャルオイル)」は香りの主役、「キャリアオイル」は精油を肌に届けるための名脇役。この2つの関係性を覚えておけば、アロマの基本はばっちりです。
馬場さん:アロマセラピーの主役となるのが「精油(エッセンシャルオイル)」です。植物の香り成分だけを抽出した100%天然のオイルです。
お店やブランド、保管方法などによって品質も様々。
アロマセラピーの効果を実感していただくためにも、100%天然の精油かしっかり確認してください。
安価に売られている「アロマオイル」や「フレグランスオイル」は、合成香料などが含まれていることが多く、「精油(エッセンシャルオイル)」とは少し性質が違うものと考えてもいいかもしれません。
馬場さん:精油は非常に濃縮されており揮発性も高いため、そのまま直接肌につけることはできません。
そこで登場するのが、精油を希釈し、肌に塗れるようにするための植物油、「キャリアオイル」です。
精油の成分を肌に運ぶ役割を担い、キャリアオイル自体にも栄養価があり、保湿力も期待できます。
ホホバオイルなどが代表的です。
更年期対策として用いるうえで、他に大事なことはありますか?
馬場さん:まず大前提として、ご自身が「好き」と感じる香りを選ぶのが一番大切です。
いくら更年期対策に効果的と言われる香りでも、ご自身が嫌いだと感じれば、それはストレスにしかなりません。
もし、何から試せばいいか本当に分からないという場合は、オレンジなどの柑橘系の香りから試してみてはいかがでしょうか。
多くの方に好まれやすいですし、気分を明るくしてくれるので、最初の1本としておすすめです。
そもそも、なぜ香りを嗅ぐだけで、イライラが落ち着いたり、気持ちが安らいだりするのでしょうか。その秘密は、「嗅覚」と「脳」の仕組みにありました。
なぜ香りは、これほどダイレクトに影響を与えるのでしょうか?
馬場さん:五感の中で唯一、嗅覚だけが思考を介さずに感情や本能を司る脳の領域に直接働きかけるからです。
目で見たものや耳で聞いた音は、一度「これは何だろう」と頭で考えますよね。
でも、嗅覚だけはダイレクトに本能に働きかけます。だから、良い香りを嗅いだ時に理屈抜きで「心地いい」と感じるんです。
特にどういった人がアロマの効果を実感されることが多いですか?
馬場さん:思考が優位になりがちな、いわゆる考えすぎてしまう人ほどアロマは効果的と言われています。
考えすぎてしまう時でも、香りを嗅ぐことによってダイレクトに本能に働きかけるので、リラックス効果が高まりやすいのです。
馬場さん:香りを嗅ぐ「芳香浴」が一番カンタンです。専用のディフューザーがなくても、身近なもので手軽に楽しめますよ。
精油を1〜2滴垂らし、枕元やデスクに置いておくだけ。
これが最もお手軽な方法です。
他の物や場所に色がついたり、シミになることもあるのでご注意ください。
お風呂に精油を数滴垂らして楽しむのも良い方法です。香りの蒸気でリラックス効果が高まります。
また、シャワーだけのときは洗面器にお湯をためて、足湯にしても心地よい空間になります。
足湯が面倒であれば手湯でも構いません。
洗面器などにお湯を張って精油を1〜2滴垂らし、手を入れるだけでも体は十分に温まりリラックスできます。
なにより服を脱がなくていいので、とても楽です。
肌への刺激が強い可能性があるため、以下の種類の精油は、お風呂での使用を避けるのが無難です。
・ミント系の精油 (例:ペパーミントなど)
・柑橘系の精油 (例:オレンジ、グレープフルーツ、ベルガモットなど)
まずはラベンダーなど、作用が穏やか(マイルド)なものから試すのがおすすめです。
また、肌の弱い方や初めて使う際はバスソルトやキャリアオイルで希釈するなど、刺激を弱めてからお使いください。
更年期の不調を和らげるアロマセラピーは、香りを嗅ぐ(嗅覚)だけでなく、マッサージオイルを使ってて肌に触れる(触覚)ことでも、心と体を深くリラックスさせることができます。
馬場さん:アロママッサージと言っても難しいことは行いません。皮膚を優しく撫でるだけでも心地よい感覚が脳に伝わり、十分リラックス効果が得られるからです。
ですので、気持ちいいなと感じるくらいの力でただ優しく撫でてみてください。
しかし、精油は非常にパワフルです。注意事項に気をつけつつ、安全に楽しんでみてください。
1.精油を直接肌につけない:必ずキャリアオイルで希釈して使用します。
2.飲用しない
3.目や粘膜に入れない
4.高温多湿を避けて保存
1.キャリアオイルを用意する
ホホバオイルやサンフラワーオイルなどがおすすめです。
2.精油と混ぜる
キャリアオイル5mlあたり、1〜2.5滴入れて混ぜます。妊婦さんなどは、5mlあたり1滴にしましょう。
馬場さん:マッサージのポイントは、圧を掛けずゆっくり撫でること。
これらは筋肉をほぐすのではなく、優しいタッチで脳をリラックスさせることが目的です。
また、マッサージをするときは息を止めずに、ふーっと長く吐きながら行っていただくと、より深くリラックスすることができますよ。
行いやすいところで大丈夫ですが、女性ホルモンと関係が深いと言われているおすすめ部位はこちらです。
仙骨には坐骨神経や骨盤内の様々な神経が通っているので、仙骨への優しい刺激は更年期のケアとしておすすめです。
月経痛や生理不順などにも効果的です。
おへそを中心に、時計回りに円を描くように優しくなでます。
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、リラックスすることで腸の動きが良くなり、便秘の改善や気分の安定につながります。
胸の上部を、中心から外側に向かってなでます。
ここは呼吸を司る筋肉が集まる場所であり、ストレスで浅くなりがちな呼吸を深く、穏やかにしてくれます。リラックス効果が非常に高い部位です。
むくみが気になる場合は、足首から膝に向かってマッサージするのがおすすめです。
心臓から遠い足の血行を促すことで、全身の巡りが良くなり、冷えやだるさの解消に役立ちます。
更年期に現れやすい具体的なお悩みに合わせたおすすめのアロマを、馬場さんに詳しく教えていただきました。
お悩み | おすすめの精油 | 香りの特徴 |
---|---|---|
眠れない 眠りが浅い | ラベンダー ベルガモット | 心身の緊張をほぐし、深いリラックスへ |
急なほてり | ペパーミント(少量) | スーッとする清涼感が体感温度を下げる |
むくみが気になる | グレープフルーツ | 血行促進、余分な水分や老廃物の排出をサポート |
お悩み | おすすめの精油 | 香りの特徴 |
---|---|---|
イライラ 不安を感じる | イランイラン | 緊張を緩め、幸福感をもたらす |
動悸 強い不安 | フランキンセンス | 呼吸を深く穏やかに整え、鎮める |
気持ちが落ち込む やる気が出ない | オレンジ ベルガモット | 心を明るくし、前向きなエネルギーを与える |
落ち着かない | サンダルウッド | 「地に足をつける」ような感覚で、心を深く落ち着かせる |
「アロマは試してみたいけど、自分でオイルを揃えるのは少し大変そう…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方におすすめしたいのが、「おやすみスプレー」です。
このスプレーは、化学成分不使用にこだわり、精油をベースに作られています。
シュッとひと吹きするだけで、ベルガモットやオレンジ・スイートなど、柑橘系の優しい香りが広がり、心地よい眠りの世界へと誘います。
シュッと一吹き
アロマでおやすみ気分
おやすみスプレー
筆者が持参したおやすみスプレーについて、馬場さんに率直な意見を伺いました。
こうしたスプレータイプの商品は、アロマの入門としてはいかがでしょうか?
馬場さん:香りがお好きであれば、もちろん良いと思います。
スプレータイプは、枕元にシュッと吹きかけるだけで使えるので、「手軽さ」という点では一番始めやすいですよね。
「この香りを嗅いだら寝る時間」という、脳のスイッチを切り替えるきっかけとしても、とても有効だと思います。
やはり純粋な精油とは違うものですか?
馬場さん:様々な成分がブレンドされている分、アロマセラピーとしての深い効果、という点では少しマイルドかもしれません。
なるほど。手軽さと、本格的な効果は少し違う、と。
馬場さん:はい。ですから、まずはこうしたスプレーで「生活に香りを取り入れる」という体験をしてみるといいと思います。
もし、もっと本格的に香りを楽しみたいと感じたら、ご自身の好きな精油を1本探してみるのが良いかもしれませんね。
ここまでアロマセラピーの具体的な方法を伺ってきました。
ここからは、芥川バースクリニックの芥川院長に、医学的な視点から更年期との向き合い方について伺います。
アロマが心身に良い影響を与えるメカニズムを、医学的に説明するとどうなるのでしょうか?
芥川さん:脳の「視床下部」という部分は、自律神経のコントロールや女性ホルモンの分泌に関わる司令塔です。
芥川さん:視床下部は匂いと密接に関係しており、リラックスできる香りを嗅ぐことで正常に働き、ホルモンバランスや自律神経が整いやすくなる。
これは、アロマの効果が期待できる医学的な根拠の一つと言えます。
更年期の症状に悩む方に、医師として伝えたいことはありますか?
芥川さん:まず何よりも知っておいてほしいのは、「あなたのその症状は、気のせいではない」ということです。
更年期は、女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで起こる自然な変化の時期です。
更年期の不調で婦人科を受診することをためらう方は多いのでしょうか?
芥川さん:「これくらいのことで」と我慢してしまう方が多いですね。
今は簡単な血液検査で、ご自身がどういうホルモン状態にあるのかを知ることができます。
原因がわかるだけでも気持ちが楽になる方はたくさんいらっしゃいますよ。
病院では、具体的にどのような治療法があるのでしょうか?
芥川さん:症状やご希望を伺いながら漢方薬を処方したり、減少した女性ホルモンを補う「ホルモン補充療法(HRT)」を行ったりします。
アロマのようなセルフケアと並行して医療という選択肢も持っておくことで、安心してこの時期を乗り越えられます。
1人で抱え込まず、ぜひ気軽に産婦人科のドアを叩いてください。
アロマセラピーと聞くとハードルが高い印象を持っていましたが、好きな香りを選び、ティッシュに垂らすだけでも立派なアロマセラピーになります。
より深くケアをしたい日にはアロママッサージを、それでも辛い場合は産婦人科を受診するなど、更年期に対処するための選択肢を増やしていければ、これからの毎日がより健やかになるはずです。
まずは1本、お気に入りの香りを見つけて、自分を大事に労る豊かな時間を味わってみませんか?
※本記事で紹介した方法は医療行為ではなく、症状の治療を保証するものではありません。ご自身の判断で、セルフケアの一環としてお楽しみいただき、体調に不安がある場合は専門の医療機関にご相談ください。