【眼精疲労の治し方】温めるだけでは治らない!目の筋トレで根本改善
更新日:2025/09/19
温めたり、目薬を差したりと、色々試しても繰り返す眼精疲労。
もしあなたがそんなループに悩んでいるのなら、そのアプローチは、根本的に間違っているのかもしれません。
今回は、アメリカの目の検査資格「オプトメトリドクター」を持つ専門家、北出勝也さんにお話を伺いました。
休ませるだけではない、”鍛えて治す”という新しいアプローチ。その理論と実践法を、詳しく解説していただきます。
目次
温めたり目を瞑ったり、目を「休ませる」ケアは一般的ですが、なぜあえて目を「動かす」トレーニングが必要なのでしょうか。
北出さんは、その違いは「対症療法」と「根本治療」だと語ります。
目の疲れを取るというと、温めたり休ませたりするイメージが強いです。ビジョントレーニングは真逆というか、「積極的に動かす」アプローチですよね。
北出さん:はい。目を休ませるというのは、あくまで対症療法です。
それに対してビジョントレーニングは、積極的に動かすことで筋力を高め、目の筋力にスタミナをつけることを目的としています。
まさに「目の筋トレ」というイメージでしょうか。
北出さん:簡単に言うと、その通りです。
重たい荷物を持つとき、筋力がないとすぐに疲れてしまいますが、ある程度筋力があれば楽に持ち運べますよね。
それと同じで、目の筋肉にもスタミナがあれば、多少のストレスがかかっても楽に対応できるようになるんです。
なるほど。疲れにくい体質(目質?)に変えていく、ということですね。
北出さん:はい。現代人はスマートフォンなどで目を動かす機会が減り、筋肉が動かしにくくなっている方が非常に多いです。
だからこそ、1日に数分でも意識的に動かしてあげることで、筋力を改善し、疲れにくい状態を作ることが根本的な解決に繋がるのです。
「眼精疲労」と一言でいっても、その症状は人それぞれ。
北出さんによると、特定の「目の筋肉」の弱さが、抱えている悩みに直結しているケースが非常に多いと言います。
あなたの悩みは、どのタイプに当てはまるでしょうか。
スマートフォンや書類など、近くのものを長時間見ていると、すぐにしょぼしょぼしてくる。
この症状に悩む方は、目を内側に「寄せる」筋肉の力が弱まっている可能性があります。
そもそも、近くを見るのにも筋力が必要だという認識がありませんでした。
北出さん:そうですよね。近くを集中して見るためには、両方の黒目をぐっと内側に寄せる必要があります。
この「寄せる力」が弱いと、ピントを合わせ続けるために余計なエネルギーを使うことになり、結果として目が疲れやすくなってしまうのです。
近年は特に、スマホの影響でこの力が弱い方が増えている印象です。
そのため、原因不明の疲れ目だと思っていたら、実はこの筋力不足が原因だった、というケースは少なくないのです。
横書きの文章を目で追っていく作業が苦手で、行を読み飛ばしてしまったり、内容が頭に入ってこなかったりする。
この場合、目を滑らかに「動かす」筋肉、特に左右に動かす力がうまく使えていないのかもしれません。
北出さん:文章を目でまっすぐ追っていく力や、黒板を書き写すといった作業も、目の運動機能が関係しています。
人によっては、目を横に動かすのが苦手だったり、縦に動かすのが苦手だったりというクセがあるんです。
横の動きが苦手な方は、やはり横書きの文章を読むときに疲れを感じやすい傾向にありますね。
子供の頃、球技が苦手だったという方も、ボールを目で追う力が弱かった可能性があります。
書類のチェックで見落としが多かったり、車の運転中に標識や歩行者に気づくのが遅れがち。
これらの悩みは、「視野」の広さや、目から入った情報を脳で処理し、体を動かすまでの連携に課題があるサインかもしれません。
北出さん:ビジョントレーニングは、単に目を動かすだけでなく、目から入った情報を頭の中で処理し、それをもとに体を適切に動かすという、一連の流れすべてを鍛えるものです。
目と脳と体の連携がスムーズになると、書類のミスが減ったり、工場の点検作業の効率が上がったりという報告もあります。
また、広い範囲を認識する「周辺視野」をうまく使えるようになると、運転中の安全性向上にも繋がります。
目の疲れが取れるだけでなく、仕事や日常生活のパフォーマンス向上も期待できるのです。
ここからは、北出さんに教わった4つの基本的なビジョントレーニングをご紹介します。
特別な道具は不要で、1日数分から始められます。まずは自分の悩みに合ったものから試してみましょう。
近くのものを長時間見ても疲れにくい、目のスタミナの基礎を作るトレーニングです。
特に、片方の目がサボりがちな場合、その目を集中的に鍛えるのがポイントになります。
1.親指を顔の前に立て、爪の一点を見つめます。
2.両目で親指の爪にピントを合わせたまま、ゆっくりと鼻先に近づけたり遠ざけたりを繰り返します。
このとき、どちらかの目が内側に寄りにくい感覚がないか確認しましょう。
3.もし「左目」が寄りにくいと感じたら、右目を隠し左目だけで、2の動きを10往復ほど繰り返します。
4.今度は左目を隠し、右目でも同様に5往復ほど行います。
5.最後に、もう一度両目を開けて10回ほど同じ動きを繰り返すと、最初よりもスムーズに両目が寄る感覚が得られるはずです。
北出さん:空き時間に1分程度、1日に3セットくらい行うだけでも効果が期待できます。
これまでうまく使えていなかった筋肉に神経が通り、楽に寄せられるようになってきますよ。
目の可動域を広げ、文章などを目で追う動きを滑らかにするトレーニングです。
自分の苦手な方向を見つけ、そこを重点的に行うのが効果的です。
1.親指を立てて爪の一点を見つめ、頭を動かさないように、目だけで親指の爪の先を追いかけます。
2.腕を左右に、黒目が端から端まで動くのを意識しながら、ゆっくり10往復動かします。
3.次に、上下に10往復動かします。
4.斜め45度の方向に10往復ずつ動かします。
5.逆方向の斜め45度にも10往復ずつ動かします。
北出さん:この動きをしたときに、「横方向が特に疲れるな」「顔が一緒に動いてしまうな」と感じたら、そこがあなたの弱点です。
苦手な方向を中心に練習することで、だんだん動きがスムーズになり、文章を読むのも楽になっていきます。
目と首の動きを連動させ、より自然な視線の動きを促すトレーニングです。
首周りの筋肉も使うため、デスクワークで凝り固まった首のストレッチ効果も期待できます。
1.親指を顔の前に立て、爪の一点を見つめ、視線を親指に固定したまま、首(頭)を動かします。
2.まずは顎を水平に保ったまま、首を真横にゆっくり10回ほど動かします。
3.次に、顎を上下に10回動かします。
4.斜め45度の方向にも、10回動かします。
5.反対方向の斜め45度にも、10回動かします。
6.最後に、顎で円を描くように、ゆっくりと首を回します。
反対回しも同様に行いましょう。
北出さん:この動きは、首の筋肉を意識的に使って目を動かすトレーニングになります。
首周りが凝っている方は、この運動でほぐれる感覚も得られるはずです。
動かしにくい方向があれば、無理のない範囲で少しずつ行ってみてください。
動かしたい方向に鼻を向けるようにすると、首が動かしやすいですよ。
中心で見ているものだけでなく、その周りの広い範囲を認識する力を鍛えるトレーニングです。目をリラックスさせる効果もあるため、一連のトレーニングの締めくくりに行うのがおすすめです。
1.姿勢を正し、3メートルほど先にある何か一点を目標物として決め、そこをぼーっと見つめます。
2.両腕を前に伸ばし、親指を立てます。目標物を見つめたまま、その両方の親指が視界の端に入っていることを意識します。
3.目標物から視線を動かさないまま、両腕をゆっくりと左右に広げていきます。
親指が視界から消えるギリギリのところまで広げ、また中央に戻します。この動きを繰り返します。
4.同様に、上下にも腕を動かし、自分の視野の広さを確認します。
5.最後に斜め45度の方向にも動かし、視野の広さを確認します。
6.反対方向の斜め45度にも行い、視野の広さを確認します。
北出さん:普段、私たちはモノを「中心」で見ることに集中しがちですが、周辺視野をうまく使うことは、車の運転やスポーツなど、様々な場面で重要になります。
また、視野を広く意識することは目をリラックスさせることにも繋がるので、仕事の合間のリフレッシュにも効果的ですよ。
ちなみに、筆者がトレーニングを行ったところ、左目の動きが劇的に改善されました。
目元から前頭葉あたりの滞っていた血流が一気に流れたのか、目元の軽さを感じ、頭がスッキリする感覚を覚えました。
トレーニングをやってみましたが、かなり目が疲れますね。これは効いている証拠なのでしょうか。
北出さん:はい。普段使わない筋肉を動かしているので、最初は疲れを感じると思います。
ですが、続けていくうちにだんだん楽にできるようになり、それが目の疲れにくさに繋がっていきます。
また、目をしっかり動かすと、脳の前頭葉という部分に血流が集まるので、トレーニング後に頭がスッキリする感覚を得られることもありますよ。
どのくらいの頻度や時間、行えばよいのでしょうか?
北出さん:毎日続けることが理想ですが、無理は禁物です。まずは1日に1つのトレーニングを1分やるだけでも構いません。
例えば、仕事の合間に「寄せトレ」を1分、お昼休憩に「追いかけトレ」を1分というように、スキマ時間を見つけて、合計で1日3セットくらいできると良いですね。
既に目が疲れている状態でトレーニングをしても大丈夫ですか?また、トレーニング後のケアで効果的なものはありますか?
北出さん:ひどく疲れている場合は、先に温めたり、ツボ押しをしたりして少し筋肉をほぐしてからトレーニングするのも良いでしょう。
基本的には、トレーニングで筋肉を動かした後に、温めて休ませるという順番が、血行も良くなり最も効果的です。
実は目の周りのツボを刺激し、コリをほぐしてくれる「眼精ピロー」という商品を持参しました。ビジョントレーニングと組み合わせるのは効果的でしょうか?
北出さん:そうですね、トレーニングで筋肉を動かした後に、こういうアイテムでケアをするのが良いと思います。
ああ、これは気持ちいいですね。しっかり、ツボを刺激されている感じです。
北出さん:ただ、よほど目が疲れているときは、先にこれで筋肉をほぐしてからトレーニングに入るのも良いかもしれませんね。
重たい目の疲れを
軽やかにほぐす
眼精ピロー
くり返すつらい眼精疲労。その原因は「休養不足」だけでなく、専門家が指摘する根本原因「目の筋力不足」にもありました。
「ピントが合いにくい」「目がかすむ」といったお悩みに合わせて、ビジョントレーニングを行い目の筋肉を鍛え、正しいケアを行いましょう。
ご紹介したトレーニングは、どれも1日1分から無理なく始められるものばかりです。
今日の小さな一歩で、明日の快適な視界を作っていきましょう。